87年9月26日から公開された、東宝映画『竹取物語』のサウンドトラックに収められた作品。
作曲は、ボビー・コールドウェルとジョン・パーカー。
ボビー・コールドウェルは、言うまでもなく、AOR界の代名詞。のちに、自身のアルバムにもこの作品を収録しています。そちらの方はたしか、たばこのパーラメントのCMにも使用されていたように記憶しています。
一方、ジョン・パーカーなる人物は、『シカゴ17』の"HARD HABIT TO BREAK"を共作したジョン・(ルイス・)パーカーと同一人物だと思われます。
曲のプロデュースは、ピーター・セテラとボビー・コールドウェルが共同であたっています。
映画の主役かぐや姫役には沢口靖子さんが抜擢されました。当時、この曲がカネボウの87年秋のイメージソングに起用され、沢口さんもこのかぐや姫姿で登場したこともあって、非常に鮮烈な印象を受けたことを思い出します。
監督は巨匠市川崑が担当。共演者が三船敏郎、若尾文子、石坂浩二、中井貴一という豪華な顔ぶれで、しかも、総制作費が20億円という破格の扱い。いかに東宝がこの映画にいれ込んでいたかがうかがわれようというものです。
古典的名作を現代のテクノロジーをもって映像化した本映画は、脇を固める名優たちによって実に引き締まった作品となっています。中でも、繊細なライティングには惹き付けられます。SFXを用いていてもまったく陳腐さを感じさせないのは、これら人的要素がしっかりと根底に横たわっているからでしょう。
そして、この映画『竹取物語』は、2004年4月28日、ついにDVD化されるに至っています。
ピーターの歌うこの"STAY WITH ME"は、映画が終わって、エンド・ロールの部分に流れるだけですが、本編である映画が素晴らしく、むしろ、曲の方が圧倒されているのでは?と思わせるくらいの作品ですので、ぜひともご覧いただきたいところです。
とはいえ、ピーターの歌唱はもちろん天下一品。
日本の大古典を海外のアーティストが歌うのは多少不思議な感じがしないでもないのですが、かぐや姫自体、地球の人ではないのでしょうから、大した問題ではないように思われます。何より、SFXを駆使した同映画にはもってこいの華やかな曲調に仕上がっています。
『竹取物語』の原作は、月に帰るかぐや姫を惜しむ結末でおなじみですが、この曲も、去り行く恋人に≪お願いだから、僕と一緒にいておくれ≫と語り掛ける内容でして、物語のイメージにピッタリです。
どういった経緯で発注したのか分かりませんが、日本側から作曲者のボビー・コールドウェル側に物語のあらましでも説明していたのでしょうか?歌うピーターの方は、録音にあたって資料を読んで感動していたそうですが、あまりの曲のはまり具合に多くの日本人の方が感銘を受けたように思います。
さて、この"STAY WITH ME"ですが、これまでのピーターのソロ作品には正式には収録されていません。
上記のように映画のDVD化は達成されたものの、その初出サントラCD(32XD-827)はすでに廃盤扱いです。
但し、この廃盤となったサントラに収録されていた"STAY WITH ME"は、アルバム・バージョンというべく、分数が5分37秒もある長い曲となっていました。つまり、シングル・バージョンと比べて、エンディングの演奏が1分弱長いのです。
もっとも、アルバム・バージョンといっても、その延長分は、曲のフェイド部分の演奏が延々と続くという程度の違いしかなく、強いてこのアルバム・バージョンを追い求めるほどではないようにも思われます。
この点、従来発売されたコンピレーションCDの大半は、シングル・バージョンを収録していました。例えば、『ラヴ・ライツ』(WPCR-10950)、『ウィ・アー・ザ・エイティーズVOL.4』(WPCR-773)などはシングル・バージョンです。
しかし、おかげさまで、最近は、このアルバム・バージョンを収録したコンピレーションCDも発売されてきました。例えば、『Beach Breeze cassette story』(WPCR-12104)などは、オリジナルのアルバム・バージョンとなっています。ただ、音源がリマスターされているのかは判然としません。
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