ディスコグラフィ   シカゴ(06)

CHICAGO VI (1973/6)
CHICAGO

曲目 遙かなる亜米利加
シカゴ
総評

試聴♪

Produced by JAMES WILLIAM GUERCIO

曲目
01 CRITICS' CHOICE お気に召すまま
02 JUST YOU 'N' ME 君とふたりで
03 DARLIN' DEAR 愛しいお前
04 JENNY ジェニー
05 WHAT'S THIS WORLD COMIN' TO 輝ける未来
06 SOMETHING IN THIS CITY CHANGES PEOPLE 誰かが僕を
07 HOLLYWOOD ハリウッド
08 IN TERMS OF TWO 明日への願い
09 REDISCOVERY 自由への扉
10 FEELIN' STRONGER EVERY DAY 愛のきずな
<ライノ再発盤ボーナス・トラック>
11 BEYOND ALL OUR SORROWS
(Terry Kath Demo)
ビヨンド・オール・アワ・サロウズ
12 TIRED OF BEING ALONE
(From the Television Special Chicago In The Rockies)
タイアド・オブ・ビーイング・アローン
総評

01

CRITICS' CHOICE
お気に召すまま

ROBERT LAMM

02
JUST YOU 'N' ME
君とふたりで
JAMES PANKOW

シカゴに2枚目のミリオン・セラーをもたらした傑作(最高位第4位)。滑らかに繰り出されるブラス・イントロ。ピーターのツヤのある声。そして、コーラスも充実。何をとっても完成された作品。

≪キミは僕の恋人、僕の人生そのもの。キミは励ましとなる人。キミと僕。実にシンプルで自由な気分だ。ベイビー、キミこそ僕が夢見ていた人だよ≫と、まさにジミー節炸裂。ですが、愛する2人にこれ以上ふさわしい曲は考え付きません。

もっとも、曲が出来るまでの過程にはちょっとしたドラマが。当時作者のジミーは夫人と婚約前に仲違いをしていまい、そんな中でピアノに向かったら、この曲が出来たという話です。壁をブン殴ったりして暴れるよりピアノに相対する方を選ぶなんて、さすがジミー。シカゴの面々は本当に理知的、かつ、誠実で好きです。そして、この曲のかもし出す雰囲気も!

ところで、ジミーは、自ら作曲しても、この頃はまだリード・ヴォーカルをとることはなかったので、通常、テリー、ロバート、ピーターの誰が適任かを見極める作業が必要となります。しかし、このオーディションさながら、ないし、たらい回し的な振り分け作業は、大抵の場合、3人のヴォーカリストの不評をかっていたようです。

ところが、この"JUST YOU'N'ME"だけは例外でして、彼らみんなが歌いたがっていたそうです。この様子を回想したウォルターによれば、「このために、バンド内では公開審査っぽいものが行われ、3人がわれ先にとヴォーカル・ブースに入って行くのを見たよ」とのこと。さらには、「たしかジミーまでが『俺にもやらせろよ!』って入って行ったんじゃなかったっけな」なんてことまで語っています。

03
DARLIN' DEAR
愛しいお前
ROBERT LAMM

04

JENNY
ジェニー

TERRY KATH

05
WHAT'S THIS WORLD COMIN' TO
輝ける未来

JAMES PANKOW

06

SOMETHING IN THIS CITY CHANGES PEOPLE
誰かが僕を

ROBERT LAMM

07
HOLLYWOOD
ハリウッド
ROBERT LAMM

08

IN TERMS OF TWO
明日への願い

PETER CETERA

09

REDISCOVERY
自由への扉

ROBERT LAMM

10
FEELIN' STRONGER EVERY DAY
愛のきずな
PETER CETERA JAMES PANKOW

前アルバム『シカゴV』が空前の大ヒットを記録すると、シカゴは拠点をニューヨークからカリブー・ランチというロッキー山脈に位置する別荘兼スタジオに移します。他にすることもないので、レコーディングに費やす時間はたっぷりありました。中には飽きてしまったメンバーもいたようでしたが、このスタジオで生まれた作品群(『06』〜『11』)はシカゴを名実ともにトップ・バンドへ押し上げることに成功します。

こういった環境の変化ののちにリリースされたアルバムが、通算6作目にあたる、『遙かなる亜米利加』でした。前作『シカゴV』のポップ・センスを継承しつつも、前作が都会的な音だったのに対して、どこか田舎味あふれる作風を披露してくれました。

そして、同アルバムからのファースト・シングルに選ばれたのが、この"FEELIN' STRONGER EVERY DAY"です。

この曲の製作には面白いエピソードがあります。ジミーがトロンボーンをいじっていると、ピーターが「それ、何て曲だい?気に入ったよ」と言って近づいてきました。しかし、ジミーはただ適当に吹いていただけで、とくに曲ではなかったのです。それがキッカケとなって2人で書き上げていったという話です。おそらくはイントロ部分のことだったのでしょうが、ピーターはえらくお気に入りで、ソロに転じてからも、この曲をコンサートで披露したりしています。

離れ離れになりつつある恋人たちが別れ際に抱く感情。別離が≪キミにとっては最高なことで、僕にとっては最悪のこと≫という自虐的な歌詞がなんとも悲哀を誘います。そして、最後に、≪僕は日に日に強くなっている。もう大丈夫だ≫と気丈なところもみせています。共作者のジミーに言わせれば、この曲はグループの絆が強くなってきたことを暗に託したものだそうです。

また、この曲がヒットしたことで、以降、ピーターの歌う甘いバラードがチャート受けする傾向を生むようになります。

なお、国内盤の歌詞カードによると、この曲の後半フェイド部分の始まり、時間にして3分1秒過ぎに、ローリング・ストーンズの68年の大ヒット・シングル"JUMPIN' JACK FLASH"の一節が借用されています。ただ、誰のコーラスかは分かりません。それにしても、この事実には正直打ちのめされました。今までまったく気付きませんでしたから・・・。

<ライノ再発盤ボーナス・トラック>
11
BEYOND ALL OUR SORROWS (Terry Kath Demo)
ビヨンド・オール・アワ・サロウズ
TERRY KATH

73年5月に吹き込まれたデモ(初CD化)。同年6月がアルバム『遙かなる亜米利加』の発表時期ですから、きわめて直前の話です。

人を愛しているのに、その人を傷つけてしまう・・・。そんな矛盾を含んだ自分自身の悩み。この苦悩を彼女に背負わせることも辛い。一体どうしたらいいんだろう?という迷宮的な心痛。ただ思うのは、≪僕の心は、すべての悲しみを乗り越えて、キミの愛を知りたいと願っている≫ということ。そんな悲壮感漂う心の痛みが全般から読み取れそうです。もっとも、この部分の訳詞には諸説あることでしょう・・・。

かつて、ジェイムズ・パンコウが「70年代前半は自己発見の時代」と振り返り、名曲"(I'VE BEEN) SEARCHIN' SO LONG"を書きしたためたように、この"BEYOND ALL OUR SORROWS"は、テリーの自己洞察的な歌かもしれません。

それにしても、おそらくはロバートによる、ときには淡々と、ときには心に注(さ)す激しい雨音のようなピアノの旋律には、深い感銘を覚えます。かつ、痛いくらい心に響きます。

≪すべての悲しみを乗り越えて≫。邦題にしたいくらいですね。

12
TIRED OF BEING ALONE
(From the Television Special Chicago In The Rockies)
タイアド・オブ・ビーイング・アローン
AL GREEN

73年6月にテレビ・スペシャル用にシカゴとアル・グリーンが共演して録音された1曲。いわゆるブートでは多少出回っていたようですが、めでたく正式に初CD化。

オリジナルは、アル・グリーンの『GETS NEXT TO YOU』(71年)に収録。R&Bチャートではスマッシュ・ヒットを記録します。

アル・グリーンはアーカンソー州出身のゴスペル・シンガー。いわゆるサザン・ソウルの代表的存在でもあります。72年に第1位を獲得した"LET'S STAY TOGETHER"を前後して、主に70年代前半から中期にかけて絶頂期を迎えます。牧師という一面を持ち、それと平行してか、現在でも音楽的活動を行っている模様。時を同じくして、2002年に相次いでCD化が敢行されています。もっとも、肝心のシカゴとの接点についてはあいにく不詳です。すいません・・・。