前アルバム『シカゴV』が空前の大ヒットを記録すると、シカゴは拠点をニューヨークからカリブー・ランチというロッキー山脈に位置する別荘兼スタジオに移します。他にすることもないので、レコーディングに費やす時間はたっぷりありました。中には飽きてしまったメンバーもいたようでしたが、このスタジオで生まれた作品群(『06』〜『11』)はシカゴを名実ともにトップ・バンドへ押し上げることに成功します。
こういった環境の変化ののちにリリースされたアルバムが、通算6作目にあたる、『遙かなる亜米利加』でした。前作『シカゴV』のポップ・センスを継承しつつも、前作が都会的な音だったのに対して、どこか田舎味あふれる作風を披露してくれました。
そして、同アルバムからのファースト・シングルに選ばれたのが、この"FEELIN' STRONGER EVERY DAY"です。
この曲の製作には面白いエピソードがあります。ジミーがトロンボーンをいじっていると、ピーターが「それ、何て曲だい?気に入ったよ」と言って近づいてきました。しかし、ジミーはただ適当に吹いていただけで、とくに曲ではなかったのです。それがキッカケとなって2人で書き上げていったという話です。おそらくはイントロ部分のことだったのでしょうが、ピーターはえらくお気に入りで、ソロに転じてからも、この曲をコンサートで披露したりしています。
離れ離れになりつつある恋人たちが別れ際に抱く感情。別離が≪キミにとっては最高なことで、僕にとっては最悪のこと≫という自虐的な歌詞がなんとも悲哀を誘います。そして、最後に、≪僕は日に日に強くなっている。もう大丈夫だ≫と気丈なところもみせています。共作者のジミーに言わせれば、この曲はグループの絆が強くなってきたことを暗に託したものだそうです。
また、この曲がヒットしたことで、以降、ピーターの歌う甘いバラードがチャート受けする傾向を生むようになります。
なお、国内盤の歌詞カードによると、この曲の後半フェイド部分の始まり、時間にして3分1秒過ぎに、ローリング・ストーンズの68年の大ヒット・シングル"JUMPIN' JACK FLASH"の一節が借用されています。ただ、誰のコーラスかは分かりません。それにしても、この事実には正直打ちのめされました。今までまったく気付きませんでしたから・・・。
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