92年、『グループ・ポートレイト』収録。
もともと、この曲は、ドニーがスティーヴン・スティルスのバンドに所属していたときに、スティルスとワーナー・シュウェブキ(Warner Schwebke:シュウェブク?発音不詳)とともに、3人で共作した作品でした。
そして、そのときの音源は、スティーヴン・スティルスのアルバム『ILLEGAL STILLS』(76年)に収録されています。スティルスのアルバムにもかかわらず、ドニーが前半のメイン・ボーカルに抜擢され、後半のメインをスティルスが担当する、という興味深い配分でした。
この曲を評して、スティルスは、「全体を通じてドニーの12弦ギターが際立ち、それが曲をグレイトなものにしてる」と述べています。事実その通り、『ILLEGAL STILLS』バージョンでは、このドニーが奏でるギターの音色が非常にきらびやかなのが特徴的です。しかも、シカゴ版での太い声と異なり、さわやかな伸びのある声で歌い上げていることに注目が行きます。
そのほか、スティーヴン・スティルスについては、何と言っても、すて爺さんのページや、ところてんさんのページをぜひご訪問ください!
さて、やがて、ドニーはシカゴに加入し、このシカゴ版"CLOSER TO YOU"が録音されることとなります。
ただ、録音時期については、若干不明な点が残ります。91年に発売された、ボックス・セット『グループ・ポートレイト』の注意書きには、「(12作目の)『ホット・ストリート』(78年)のセッションで録音された」、とあります。しかし、一般には、続く、13作目『シカゴ13』(79年)からのシングル"MUST HAVE BEEN CRAZY"の“B面として”登場したこともあって、この13作目のセッション漏れと受け取った方もいらっしゃるかもしれません。
今回の再発盤では、録音時期の記載がないため、やはり判然としませんが、『グループ・ポートレイト』の注意書きを信用すれば、上記のように、『ホット・ストリート』(78年)のセッションで録音されたが、お披露目は翌79年だった、という経緯を踏まえて、結局、『シカゴ13』(79年)の方のボーナス・トラックとして収録された、と解釈するのが妥当のようです。
ちなみに、このシカゴ版"CLOSER TO YOU"がはじめてCD化されたのは、既述の『グループ・ポートレイト』(91年)においてでした。
シカゴ版の方は、シカゴらしく全般にわたってブラスが利いている、ゆったりとした原曲に比べてややハイ・テンポな感じがする、主にイントロとエンディングの延長により収録時間が1分以上長くなっている、などの特徴があるかと思います。
歌詞の方は細かい点で変容が見受けられますが、大意は変わらないでしょう。≪closer to you≫という言葉からすると、ある特定の女性に近づきたいとの印象を受けますが、主人公の目標は、音楽をやって成功したい、それで、女の子の関心を惹きたい、という点に向けられているような気がしました。
ところで、興味深いことに、スティーヴン・スティルスの『ILLEGAL STILLS』は、そのうちの“一部の曲”をカリブー・ランチにおいて録音しています。もっとも、スティルス版"CLOSER TO YOU"がここに言う“一部の曲”にあたるのかは分かりませんでした。また、このアルバムは、コロムビアからリリースされ、かつ、そのジャケットのアート・ディレクターは、あのジョン・バーグでした。シカゴとの接点があるとしたら、この辺は重要な示唆を与えてくれるように思います。
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