GET ON THIS
ゲット・オン・ディス

DAWAYNE BAILEY JAMES PANKOW

録音当時には収録される予定であったにもかかわらず、2008年に『32』として発表されたアルバムにおいては割愛されてしまった楽曲です。

いきなりロバート・パーマーばりのグラム調のリズム。そういえば、どこか『シカゴ18』版"長い夜"を思い起こさせます。

この曲については、ドウェイン・ベイリーが自身のフォーラムで語ってくれていますので、詳しくはそちらをご参照ください。

それによりますと、歌詞の75%はドウェイン、20%がジミー・パンコウ、残りの5%がウォルター・パラゼイダーの次女フェリシアだそうです。ジミーが書いたのはブリッジの箇所。フェリシアの部分は、彼女が書いた詩からドウェインが拝借したもの。

その歌詞の中身は、自分が見ているメチャクチャな夢の話。それを理解する(=≪get on this≫の意訳)のに時間がかかるという内容のようです。なんせ、登場人物は、ヒットラー、エルヴィス・プレスリー、そして、天使などと実に雑多。まして、小さい赤ん坊が大きな機関銃を抱え、キリストが悪魔にキスをしている夢なので、たしかに、理解不能。保守的な人たちからは非難の声が上がりそうなくらいの歌詞となっています。

この点、ドウェインは、こうも語っています。「この歌詞は、世界のデイリー・ニュースからインスパイヤされたものです。醜悪な現実を受け入れることがいかに難しいか。――ですから、≪これを理解するのには時間がかかる≫というわけです・・・」。つまり、現実に世界で起こっていることには“ついていけない!”という意味だと思われます。≪get on this≫するには時間がかかる、ということですから、逆に言えば、≪ついていけないぜ!≫という意味で捉えてよいのではないでしょうか。

となると、わざとメチャクチャな内容でもってこの醜い現実社会を描き出したものと考えてよさそうです。


全般に流れるへヴィーなギターはドウェインの演奏。ザ・キンクスの"YOU REALLY GOT ME"のイントロのような重厚感があります。


ところで、ジミーは、このアルバム『STONE OF SISYPHUS』のミックスについて、「やけに粗すぎた、もっとソフトに整える手立てがあったかもしれない」と述べていますが(『ハート・オブ・シカゴ 1967〜1981 II』(=緑盤)のライナー参照)、この"GET ON THIS"なんかもその候補だったのではないかと邪推したりします。あくまでも、これは個人的な印象ですよ!念のため。