1985年に発売された、USA FOR AFRICA名義によるアフリカの飢餓救済チャリティ・アルバム『WE ARE THE WORLD』。
シカゴは、この"WE ARE THE WORLD"のシングル自体には参加していませんが、アルバムの方に、シカゴ単独名義で未発表曲を提供します。それがこの"GOOD FOR NOTHING"です。
当時LPだったアルバムは、海外ではすでにCD化されていましたが、2003年のボックス・セット『THE BOX』の発売時にめでたくシカゴ物として正式収録されるに至ります。しかも、ちゃんとリマスター処理が施されています!
"GOOD FOR NOTHING"については、当時は全く無名だったリチャード・マークスが曲作りに参加している点が目を引きます。
しかし、具体的な事実を供出して語っていくスタイルは、ロバート・ラムの作風そのもの。おそらく、大半をロバート自身が書いたものとみていいと思います。
その歌詞の意味は、一見難しそうに映りますが、結局は、タイトル通り、結局、≪善意が無駄となった≫という内容に集約されそうです。
とくに、親友の弟を刑務所から出すことに尽力してあげたのに、≪ただの一言のお礼もないんだぜ!≫というあきれた感慨を漏らしている点が象徴的です。
なお、歌詞中、≪Merchants will always be merchants of course≫というフレーズが登場します。以前はこの意味がさっぱり分かりませんでした。ところが、前後の文脈に照らし合わせてみると、どうやら、これは、自分が逃避行の手助けをしたあるアーティストのカップルに対して、≪夢中になる人はどこまでも夢中になってしまうんだよな≫、という感想を語ったものと思われてきました。
また、未発表曲である点ですが、リチャード・マークスやデヴィッド・フォスターが関わっていることから、おそらくは、84年の『シカゴ17』のセッションで録音されたものと想像することができそうです。ただ、なぜアルバムに収録されなかったか等の詳細は不明です。
ちなみに、ギターは、クリス・ピニックではなく、ポール・ジャクソンJrという人物が担当しています。
ところで、シカゴは85年の2月中旬から5月の頭まで春ツアーを敢行しており、これを最後にピーター・セテラがグループを去ってしまいます。
それゆえ、発表順でいけば、この"GOOD FOR NOTHING"がピーター在籍時の最後の音源となりました。≪Why can't I just let it be ?≫という最終シャウトもどこかさびしげに聴こえてしまいます。ピーター脱退直後、この曲をうつろに聴いていた自分を思い出します。
それにしても、ピーターの声というのは、実に存在し難い、印象的なものだということにあらためて気付かされます。
I helped my good friend's brother
Out of trouble when he was in jail
I was flush 'cause I got lucky
Paid his lawyer and I paid his bail
Glad to be able just to pay the price
The price it took to set him free
I never heard a single thank you at all
You'd think by now I could see
All the good that I did was for nothing
All the good that I did was for nothing
Why don't* I just let it be ?
I bankrolled two young lovers
New York artists they** were on the run
Got*** them out to California
One was gifted and the other was fun
Merchants will always be merchants of course
But an artist is a fragile life
And**** this is something I have always believed
Now the memory cuts like a knife
All the good that I did was for nothing
All the good that I did was for nothing
All the good that I did
All the good that I did
Why can't i just let it be ?
All the good that I did was for nothing
All the good that I did
All the good that I did was for nothing
All the good that I did
All the good that I did
All the good that I did
All the good that I did was for nothing
以下はロバート・ラムのオフィシャル・ウェブサイトに掲載されている歌詞です。おそらく、作詞当初はこのような単語が用いられていたのだと思います。
*can't
**who
***Brought
****原詩にはなし
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