ディスコグラフィ   シカゴ(19)

CHICAGO 19 (1988/6)
CHICAGO

曲目 シカゴ19
シカゴ
総評

試聴♪

Produced by CHAS SANDFORD (01、03、05、07、08、10)

RON NEVISON (02、04、06、09)

曲目
01 HEART IN PIECES ハート・イン・ピーセズ
02 I DON'T WANNA LIVE WITHOUT YOUR LOVE リヴ・ウィズアウト・ユア・ラヴ
03 I STAND UP アイ・スタンド・アップ
04 WE CAN LAST FOREVER ウィ・キャン・ラスト・フォーエヴァー
05 COME IN FROM THE NIGHT カム・イン・フロム・ザ・ナイト
06 LOOK AWAY ルック・アウェイ
07 WHAT KIND OF MAN WOULD I BE ? ホワット・カインド・オブ・マン
08 RUNAROUND ランアラウンド
09 YOU'RE NOT ALONE ユー・アー・ノット・アローン
10 VICTORIOUS ヴィクトリアス
総評

80年代に再度隆盛を誇った、シカゴの第2次黄金期を飾る、象徴的なアルバム。

内容は当時の流行もあって、いわゆるパワー・バラード集。

本作『シカゴ19』からは、都合、過去最高の5枚というシングル・ヒットが生み出されたことになります(※但し、"WHAT KIND OF MAN WOULD I BE ?"は、次作『20』からのシングル・カットという形を取っています。また、ファースト・アルバム『』からは、"QUESTIONS 67 AND 68"が2度チャート・インを果たしており、のべ5曲を輩出したことになりますが、同曲は1曲としてカウントしたいと思います)。

01

HEART IN PIECES
ハート・イン・ピーセズ

TIM SEEHAN BRIAN MacLEOD

02
I DON'T WANNA LIVE WITHOUT YOUR LOVE
リヴ・ウィズアウト・ユア・ラヴ
DIANE WARREN ALBERT HAMMOND

本アルバム『シカゴ19』のリリースに先駆けて、88年5月にシングル・カットされた曲。

シングル・カット当時、日本では、この曲のビデオ・クリップを観ることはほとんどなかったと言っていいでしょう。一応は製作されたのですが、なぜか放映の機会に恵まれなかったのです。

ビデオの内容は、コンピューター・グラフィックの画をバックに男女が踊り、シカゴの面々がタキシード姿で歌い添える、という何とも言えないものでした。それが赤面を強いたのかどうかは分かりませんが、ワーナーから発売されたビデオ・クリップ集『ハート・オブ・シカゴ ザ・ビデオ〜素直になれなくて〜』にも収録されませんでした(2005年4月にDVD化されましたが、収録内容はVHSと同一で、やはり本曲のビデオ・クリップは含まれていません)。

もっとも、2005年5月に発売された『LOVE SONGS』の“香港盤”には、同ビデオ・クリップの“カラオケDVD”が付属していました。しかし、カラオケというだけあって、映像の上に字幕が付記されています。さすがに、これはちょっとおすすめできる品ではなさそうです・・・。

とにかく、ビデオ・クリップを観なかったせいか、シングル自体は、じりっじりっと地味に上がって来た印象があります。その結果最高位第3位まで来るとは正直夢にも思いませんでした。アルバムからのファースト・シングルであるにもかかわらず、また、その高順位にもかかわらず、ファンの中にはかなり印象の薄い方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ダイアン・ウォーレンとともに、共作者として名を連ねているのは、あのアルバート・ハモンド。オールド・ファンには涙モノの"カリフォルニアの青い空"や"落葉のコンチェルト"などで知られるハモンドは、以降はもっぱらソングライターとして活躍し、後年87年に至り、ダイアンとのコンビで、スターシップの大ヒット"愛はとまらない"を生み出します。それ以来のコンビ・ペンによるヒットとなるのが本曲"I DON'T WANNA LIVE WITHOUT YOUR LOVE"です。

別々の生活をしてもやっていけると思っていたけれど、やはり、≪キミの愛なしじゃ生きていけない≫という内容。

歌詞を眺めると、サビで≪I don't wanna〜≫、中盤で≪Guess I had to〜≫という言葉がおそらく意識的に繰り返されていることに気付きます。

ビル・チャンプリンのヴォーカルは力強く、本当に≪キミの愛なしじゃ生きていけない≫のか、不思議に思うくらいですが、「大人の恋を歌わせたら一番!」と私が勝手に考えるビルならではのヴォーカル・スタイルと言うべきでしょうね。

03
I STAND UP
アイ・スタンド・アップ
ROBERT LAMM GERARD McMAHON

04
WE CAN LAST FOREVER
ウィ・キャン・ラスト・フォーエヴァー

JASON SCHEFF JOHN DEXTER

≪行かないで≫、≪言いたいことがあるんだ≫、≪僕が必要としてるのはキミだけなんだよ≫、≪僕たちは永遠に続くのさ≫という歌詞。

相手の心情が書かれていないので、読み切れませんが、≪Don't turn away≫、≪Don't walk away≫というフレーズからすると、別れしなに男の側から発した愛のメッセージなのでしょうか。

共作という形ではあれ、ジェイソン・シェフが関わった作品がシングル・カットされるのは本作が初めてです。

ジェイソンの作風は、まだよく把握できていませんが、韻にはそれほどこだわらず、しかも、日本語にはすぐには訳しづらい表現を用いる印象を受けました。ですが、1番と2番の段落分けを明確に保持し、サビもハッキリしています。この辺に従来のシカゴらしさを感じることもできます。

05
COME IN FROM THE NIGHT
カム・イン・フロム・ザ・ナイト

BILL CHAMPLIN BRUCE GAITSCH

06
LOOK AWAY
ルック・アウェイ

DIANE WARREN

"HARD TO SAY I'M SORRY / GET AWAY"の成功で第一線への復帰を見事に成し遂げたシカゴは、アルバム16作目から19作目にかけて、放つシングルが次々とチャートの上位に名を連ねるようになり、いわば、シングルを中心とする、第2次黄金期を迎えます。

その極めつけとなったのが、ここに挙げる"LOOK AWAY"です。同曲は"HARD TO SAY I'M SORRY / GET AWAY"以来6年振りの全米NO.1を獲得するどころか、なんと89年のビルボード年間チャートでも堂々の第1位を記録します(詳しくはこちら)。結果的に、19作目『シカゴ19』はシングル・ヒットを5曲も輩出し、シカゴの歴史の中で最大のチャート成績を残すことになります。

さて、内容ですが、これは作者であるダイアン・ウォーレンの友人のエピソードが元になっています。その友人は離婚していたのですが、別れた前夫に「次の結婚相手がもう見つかった」旨の報告をしたそうなんです。その現場を近くで見ていたダイアンは、「これは絶対、曲になるっ!」と感じ、この話を男の立場から書き上げたのがこの"LOOK AWAY"だということです。

このようなLOOK AWAY"を見事に歌い上げているのがビル・チャンプリンです。オリジナル・メンバーのロバート・ラムも「彼ならではのヴォーカルをここで確立した」と称賛しています。

本当は、≪僕が通り過ぎてもそっぽを向いていておくれ。目に涙がたまっていても行き過ぎておくれ≫と、“別れても好きな人”的だがやはり“元には戻れない”的な複雑な思いを語っている曲なので、もっと繊細に、かつ、叙情的に歌った方がいいのかもしれません。でも、ここでのビルの熱唱は妙にマッチしています。最後にある、≪僕は本当にハッピーに思ってる≫という男の意地らしさを気力を振り絞って表現しているところなんか、本当にそう思います。このような熱い情感を託したボーカルはビル以外には考えられません。大人の恋を歌わせたら、シカゴ随一でしょうね。

(参考文献:『ビルボード・ベスト・オブ・ベスト』)

Q&A "LOOK AWAY"ってホントに年間第1位?
07
WHAT KIND OF MAN WOULD I BE ?
ホワット・カインド・オブ・マン

JASON SCHEFF CHAS SANDFORD BOBBY CALDWELL

前作『シカゴ18』でのヒット・シングルに続き、ジェイソン・シェフがリード・ヴォーカルをとる作品。

うつろな日々を過ごす主人公がその脱出口を求め、彼女に尋ねます。 ≪何の意味もない人生を生きるために、僕がどんな男になればいいか言ってほしい≫、≪キミはひとりで生きていけるけど、僕がキミなしで生きなければならないとしたら・・・≫と。ジェイソンが歌うと、その力強いヴォーカル・スタイルから、女々しい感じは受けません。しかし、少し間延びした、まろやかなハイ・トーン・ヴォーカルなので、どこかしら甘えん坊的な印象を受けます。

なお、本曲は、面白いことに、本アルバム『シカゴ19』ではなく、次作の『グレイテスト・ヒッツ 1982-1989』(89年)からのシングル・カットという形でヒットし、翌90年2月に最高位第5位を記録するビッグ・ヒットになります。しかも、それはシングル・バージョンでして、間奏のギター・フレーズがオリジナルの『シカゴ19』バージョンとは異なるなど、多少の修正が施されていました。

このような経緯を経ましたが、アルバム『シカゴ19』からは、結局、過去最高の5枚というシングル・ヒットが生み出されたことになります(※なお、ファースト・アルバム『シカゴの軌跡』からは、"QUESTIONS 67 AND 68"が2度チャート・インを果たしており、のべ5曲を輩出したことになりますが、同曲は1曲としてカウントしたいと思います)。

なお、この曲の共作者の1人であり、本アルバムの一部の曲をプロデュースしているCHAS SANDFORDの発音ですが、ジェイソンは「チャズ・サンフォード」と呼んでいます。つまり、“D”は読まないのですね。ジェイソンとチャズは、『シカゴXXX』においても久々の共作活動を見せ、"CAROLINE"という印象的な曲を書いています。

08
RUNAROUND
ランアラウンド

JASON SCHEFF BILL CHAMPLIN

09
YOU'RE NOT ALONE
ユー・アー・ノット・アローン
JIM SCOTT

作者のジム・スコットという人物は不勉強ながら存じ上げません。まさか、40年代からジャズ・シンガーとして活躍しているジミー・スコット(JIMMY SCOTT)と同一人物ではないでしょうけれど・・・。とにかく、よく分かりませんでした。

しかし、本曲の作者であるジム・スコットの作詞スタイルには、とても興味深いものがあります。≪spotlight≫、 ≪darkness≫、≪wings≫といった象徴的な事象を用いて、人間の感情の起伏を表現しているのです。

失恋の痛手を負う主人公に対して、≪キミは独りじゃない。キミのハートがみずみずしくて自由なうちは独りじゃないんだ≫と、キミ次第で立ち直れるんだよ、と諭(さと)します。

もっとも、≪キミは独りじゃない。だから、電話を取って、僕に話し掛けてこいよ!≫と、一転して≪電話≫という現実的なアイテムを持ち出してくるので、その辺のギャップに面食らいます。もしかして、悲しみに打ちひしがれている主人公を現実の世界に引き戻そうとしているのでしょうか。

ともあれ、傷ついた友達を励ます点では、サイモンとガーファンクルの"明日に架ける橋"、キャロル・キングの"きみの友だち"などに通じるものがあります。

リード・ヴォーカルは、"I DON'T WANNA LIVE WITHOUT YOUR LOVE"、"LOOK AWAY"の大ヒットに続き、ビル・チャンプリンが担当。応援歌的なこの曲のリード・ヴォーカルとして最適の人選だと思います。

10
VICTORIOUS
ヴィクトリアス
MARK JORDAN JOHN CHAPEK