ディスコグラフィ   ピーター・セテラ(02)

SOLITUDE / SOLITAIRE (1986/6)
PETER CETERA

曲目 ソリテュード〜ソリティア
ピーター・セテラ
総評

試聴♪

Produced by MICHAEL OMARTIAN

曲目
01 BIG MISTAKE ビッグ・ミステイク
02 THEY DON'T MAKE 'EM LIKE THEY USED TO ゼイ・ドント・メイク・エム
03 GLORY OF LOVE グローリー・オブ・ラヴ
04 QUEEN OF THE MASQUERADE BALL クイーン・オブ・マスカレード
05 DADDY'S GIRL ダディズ・ガール
06 THE NEXT TIME I FALL ネクスト・タイム
07 WAKE UP TO LOVE ウェイク・アップ・トゥ・ラヴ
08 SOLITUDE / SOLITAIRE ソリテュード〜ソリティア
09 ONLY LOVE KNOWS WHY 愛だけが証(あか)し
総評

01

BIG MISTAKE
ビッグ・ミステイク

PETER CETERA GALPIN

02

THEY DON'T MAKE 'EM LIKE THEY USED TO
ゼイ・ドント・メイク・エム

PETER CETERA BULLING

03
GLORY OF LOVE
グローリー・オブ・ラヴ
PETER CETERA DAVID FOSTER DIANE NINI

85年5月、突如、シカゴからの脱退を表明したピーター・セテラは、ソロ第2弾となる本アルバムの製作にとりかかります。

その製作中、ピーターは、ユナイテッド・アーチスツ・レコード社から、同社が担当するサントラ、『ベスト・キッド2』用の曲のオファーを受けます。はじめにピーターが提示した曲は、アップ・テンポな"THEY DON'T MAKE 'EM LIKE THEY USED TO"だったようです。しかし、会社側が求めていたのは、バラードでした。

そこで、ピーターは、まだ未完成だった本曲"GLORY OF LOVE"をその場で何小節か歌います。その会社の社長と副社長はこれをたいそう気に入り、ピーターは曲の完成に向けて動き出します。

ところが、この作業がなかなかうまく行かず、壁にあたります。そんなとき、ピーターがメロディに合わせて何やらつぶやいていると、妻のダイアン・ニニにはそれが「glory of love」と言っているように聴こえたそうです。そこから2人で共作し、書き上げたのが本曲ということです。残念ながら、その後、2人は破局しますが、2人の残したこの曲は、ピーターの本格的なソロ活動のスタートを華々しく飾る、永遠の傑作となりました。

もっとも、以上の経過には、今まで知られていなかった事実が存在していました。すなわち、2007年6月に行われたピーター・セテラのインタビューによりますと、実は、この"GLORY OF LOVE"は、『ベスト・キッド2』よりも先に、『ロッキー4』のオファーに応じたものであったそうなのです。ピーターは、実際に、『ロッキー4』のプレゼン用の試写を観ています。だからこそ、この曲には、≪I am a man who will fight for your honor≫という歌詞が含まれているのだそうです。しかし、何らかの原因により、結局は『ロッキー4』のサントラには採用されませんでした。そして、後年、上記『ベスト・キッド2』のユナイテッド・アーチスツ・レコード社がピーターに接触して来たというのが事の真相のようです。

ところで、『ロッキー4』の全米公開は1985年11月でした。そうしますと、かなり早い段階から、ピーターにオファーがあったということです。これはピーターの脱退時期である同年5月と照らし合わせても興味深い話題となりそうです。

さて、私が最初にこの曲を聴いたのは、湯川れい子さんの全米TOP40でした。待ちに待ったオン・エア解禁。ビードロが流れるような、きらびやかなイントロに心を奪われたことを昨日のことのように覚えています。聴いた瞬間、「絶対1位になるっ!」と確信したものです。その通り、この曲は、86年6月7日に62位で初登場するや否や順調にチャート階段を駆け上がり、8月2日と9日に見事NO.1を獲得します。

内容に関しては、とにかく、≪glory of love≫という言葉の訳し方がうまくできず、当時からその微妙なニュアンスを捉えることに難儀しました。直訳すると、≪愛の栄光≫ですから、これはすなわち、“愛というすばらしいもの”、もしくは、“愛で一杯の状態”、とでもいった意味に捉えることができそうです。≪この愛というすばらしいもののために、僕らはすべてを賭けてきたんだ≫、≪そのことに僕らは気付き、やがて永遠に暮らして行くんだね≫。こんな感じでしょうか。

映画『ベスト・キッド2』は、大ヒットした前作に続く格闘友情物語第2弾で、86年公開。今度は沖縄(ロケ地はハワイ)を舞台にし、師弟それぞれの恋愛模様をメイン・テーマに据えた映画でした。但し、“あえて”なのか、単に考証を怠ったのか、日本文化に対する誤解が多く垣間見られた映画でもありました。もっとも、こういったことはお互いの国の映画に散見されることですので、取り立てて騒ぐほどのこともないでしょう。

なお、ピーターの歌うこの曲はエンディングに使用されていたと記憶しています。この曲のプロモーション・ビデオにも、映画のシーンがふんだんに引用されていました。

そうそう、さすがにサントラらしく、この映画に合わせてか、騎士道精神みたいなものを歌詞全体から汲み取ることができます。まず、サビの冒頭、≪僕はキミの名誉のために戦う男さ。キミが夢見ているヒーローになってみせるよ≫という部分、また、後半、≪ピカピカの鎧で固めた古代の騎士のように、見事キミを救って、はるか古城に連れ戻すのさ≫といった部分などはその代表。

結局、曲のテーマは、歌詞の一節にあるように、≪いつまでもキミを愛していくよ。決して1人にはしないよ≫ということだと思います。

ところで、本アルバムを店頭で見かけることは最近は非常に少なくなりました。ですが、この"GLORY OF LOVE"自体は各種コンピレーション物に多数収録されています。

さらに、2005年には、シカゴの『LOVE SONGS』が発売されました。その日本国内盤は、シカゴのラヴ・ソング集であるにもかかわらず、ピーターのソロ・ヒットである、この"GLORY OF LOVE"も収録されています。しかも、音源がリマスターされているので、この曲をお探しの方には、『LOVE SONGS』が断然のおすすめです。

(参考文献:『ビルボード・ナンバー1・ヒット1985-1988』)

04

QUEEN OF THE MASQUERADE BALL
クイーン・オブ・マスカレード

PETER CETERA MICHAEL OMARTIAN

05

DADDY'S GIRL
ダディズ・ガール

PETER CETERA MARK GOLDENBERG

06

THE NEXT TIME I FALL
ネクスト・タイム

BOBBY CALDWELL PAUL GORDON

"GLORY OF LOVE"の大ヒットに続き、またもや全米NO.1を獲得した曲(1986年12月6日付)。この曲によって、ソロに転向したピーターの地位は揺るぎないものとなります。

しかも、今回は、エイミー・グラントとのデュエット形式。ピーター自身、それまでの個人的なセッション参加において、デュエットがなかったわけではないのですが、この組み合わせは、当時としては非常に目新しく感じました。何より、このエイミー・グラントという女性は世間的にはまったく知られていない人だったのです。

いきさつはこうです。ピーターは、以前よりデュエットに興味があり、ずっと相手を探していたそうです。人選を行うにつれ、「みんなをあっと驚かせるような人物」をパートナーにしようと考え出し、「今まで自分が足を踏み入れたことのない分野の人」としてこのエイミー・グラントに白羽の矢を立てたのです。この過程には、プロデューサーであるマイケル・オマーティアンの尽力があったということで、たぶん、オマーティアンの推薦によるものと思われます。

さて、彼女が知られていないのもそのはず。エイミーは、クリスチャン・ミュージックという敬虔な宗教的要素を加味した音楽の世界で10代の頃から活動してきた人物なのです。このように一般のポップ・チャートと全然違うジャンルにいたため、ピーターの思惑通り、リスナーは「誰?」と驚いてしまったわけです。

ところが、もっと驚いたのは、当のエイミー本人。子供のときから聴いていた声の主であるピーターからのオファーに言葉もなかったとか。ピーター側の迅速な対応は、矢継ぎ早に事を運ぶ結果となり、なんと、レコーディングに要した日数はたったの1日。エイミーはそのとき自分のツアーの真っ最中で、飛行機による日帰り行だったそうです。

エイミーは、この"THE NEXT TIME I FALL"の大成功の後しばらくは、クリスチャン・ミュージックの世界に舞い戻りますが、突如として、一般チャートにも本格的に進出し始め、1991年には、全米NO.1ソング"BABY BABY"のほか、数曲のトップ10シングルを含むアルバム『HEART IN MOTION』を大ヒットさせます。この事実にも驚かされました。私は、ピーターの先見の目に人知れず感心したわけです。

さて、曲自体の紹介ですが、作者は、ボビー・コールドウェルとポール・ゴードン。彼らは、ピーターが曲を探しているという話を聞いたため、ピーター向きの曲の製作にとりかかり、デモ・テープをピーター・サイドに渡します。ちなみに、このときのデモ・テープはボビー・コールドウェルが吹き込んだそうです。ところが、彼らは当然ピーターがソロで歌うものだとばかり思っていました。しかし、ポ−ル・ゴードンは、「それは面白い」と意外に乗り気だったようです。

歌詞の内容は、タイトル通り、≪次に恋に落ちるとき≫への決意が語られています。おそらく、破局を迎えた恋人同士が再びよりを戻そうかどうかという微妙な時期における心境を表現したものではないでしょうか。

≪次に恋に落ちるとき、僕はどうすればいいか分かってる。それはキミと一緒にいることだ≫、と後悔と期待の入り混じった複雑な気持ちがうかがわれます。

上述のように、作曲段階でデュエットを想定していなかったため、全編が男側からの心理描写となっており、たしかに、デュエット用に男女に振り分けるのは難しい作品です。エイミーが担当するパートも、男側の心理状態だと思われます。

(参考文献:『ビルボード・ナンバー1・ヒット1985-1988』)

07

WAKE UP TO LOVE
ウェイク・アップ・トゥ・ラヴ

PETER CETERA DAVID "HAWK" WOLINSKI MICHAEL OMARTIAN

08

SOLITUDE / SOLITAIRE
ソリテュード〜ソリティア

PETER CETERA MICHAEL OMARTIAN

09

ONLY LOVE KNOWS WHY
愛だけが証(あか)し

PETER CETERA BITZER MICHAEL OMARTIAN