ディスコグラフィ   シカゴ(10)

CHICAGO X (1976/6)
CHICAGO

曲目 シカゴX(カリブの旋風)
シカゴ
総評

試聴♪

Produced by JAMES WILLIAM GUERCIO

曲目
01 ONCE OR TWICE ロックンロール・シカゴ
02 YOU ARE ON MY MIND 君の居ない今
03 SKIN TIGHT スキン・タイト
04 IF YOU LEAVE ME NOW 愛ある別れ
05 TOGETHER AGAIN 再び君と
06 ANOTHER RAINY DAY IN NEW YORK CITY 雨の日のニューヨーク
07 MAMA MAMA いとしい人
08 SCRAPBOOK 思い出のスクラップ・ブック
09 GENTLY I'LL WAKE YOU 僕だけの君に
10 YOU GET IT UP 君はセクシー
11 HOPE FOR LOVE 愛の終わりに・・・・・・
<ライノ再発盤ボーナス・トラック>
12 I'D RATHER BE RICH
(Original Version / Rehearsal)
憧れのリッチ・マン
(オリジナル・バージョン/リハーサル)
13 YOUR LOVE'S AN ATTITUDE ユア・ラヴズ・アン・アティテュード
総評

01

ONCE OR TWICE
ロックンロール・シカゴ

TERRY KATH

これ、最初に聴いたとき、感動しましたねー。「かっちょイイ〜!」って。

♪デ・デ・デッ・デ・デ、デ・デ・デッ・デ・デ、デ・デ・デッ・デ・デ、デッ・デ・デ・デー、≪Girl〜〜〜≫という出だし部分なんてよく思いついたなあ、と唸らせるメロディです。

中盤に現れるロバートの強いピアノ・アクトも必聴!

内容はラブ・ソング、しかも、推測するに、お互い恋に破れた者同士で、うまくやっていかないかい?という歌詞のように思われます。

しかも、テリーの深みのあるシャウトは天下一品。うまい具合にロックとポップスの合間を縫った名曲だと思います。

02
YOU ARE ON MY MIND
君の居ない今
JAMES PANKOW

初期の頃からジミーは作詞を手掛けてはいましたが、自らがリード・ボーカルを取ることはありませんでした。しかし、この曲ははじめてその例外にあたることとなります。

グループ・ポートレイト』のライナーによれば、「抑揚(=イントネーション)や感覚の面」でテリー、ピーター、ロバートの3人に理解させることができなかったそうです。普段は自分の曲でもそんなに注文をつけないジミーでしたが、この曲ばかりはついに口を出し、「それなら、お前が歌えよ!」とガルシオに突っ込まれて(笑)、ジミー初のリード・ボーカル作品が誕生したわけです。

ヴォーカルの質はハスキー調。リーのハスキーさよりも若干低く、そして深みがある感じがします。意図的なレコーディング技術によるものでしたら、すいません。

それにしても、不思議と、シカゴには結果的にこれ以外の組み合わせはないな、という曲が多いような気がします。それだけ曲作りの完成度は高く、また、的を射た人選になってるのでしょう。この曲も他の誰かが歌ったらどうだったか?と考えてもあまり想像できないんですよね。

この曲をトロンボーン片手に歌うジミーの勇姿は見事なまでに超セクシー。たしかに、この危ういセクシー加減は他の誰にも真似できないかも・・・。

03
SKIN TIGHT
スキン・タイト
JAMES PANKOW

04
IF YOU LEAVE ME NOW
愛ある別れ

PETER CETERA

デビュー以来7年目にしてはじめて獲得したNO.1ソングです。

当アルバム『シカゴX』は、その制作過程において、よくある「あと1曲足りない」という状況に追い込まれました。そこで、半ば即興的に録音されたのがこの"IF YOU LEAVE ME NOW"なのです。もっとも、1日や2日で出来たものではもちろんないと思います。とはいえ、そういう経緯なので、この曲に後付けされた部分は、全般に流れるストリングス・パートなどごく限られたもののようです。

そのストリングスのアレンジは、映画の背景音楽などで有名なジミー・ハスケル(JIMMIE HASKELL)が担当しています。ここにストリングスとは弦楽器のことを言いますが、それが具体的にバイオリンであるかどうかなどは不明です。

ハスケルはこの曲と"MAMA MAMA"において、ストリングスのほか、フレンチ・ホーンのアレンジを担当してます。彼のおかげでシカゴは第19回グラミー賞においてベスト・アレンジメント賞を受賞しました。シカゴ・ファンとしては、同じジミーでも、パンコウじゃないとこがチト辛い?

内容は、情けないくらい女々しい優男(やさおとこ)の語りです。≪今君が去ると僕はとても大きなものを失う。だから、お願い、行かないでおくれ・・・≫。でも、こういう歌を歌わせたらピーターの右に出る人はいないのではないでしょうか。

個人的に好きなのは、≪A love like ours is love that's hard to find≫から始まるサビの部分にストリングスが重なる箇所です。とくに、2分20秒あたりの≪We've come too far to leave it all behind≫とクロスするストリングスの調べには鳥肌が出るくらい感動します。

また、歌詞にはピーターの作詞の特徴がとてもよく出ています。つまり、ポール・マッカートニーばりの韻を踏むところですね。まあ、万国共通の作曲テクニックではありますが。

……part of me
……heart of me

……hard to find
……all behind

……slip away
……this way



しかし、この曲が元で路線の違いが明確になるという副作用を生じてしまいます。

つまり、あくまでもロックンロールを地で行きたいとするグループ全体の意志と、のちのAOR路線につながるバラードを所望するピーターの嗜好との違いがこの曲を前後にもはや決定的となります。

しかも、この"IF YOU LEAVE ME NOW"は世界中でヒットしたため、初期の“バリバリロック”のシカゴを知らないファン層をも獲得し、その結果、シカゴは“ピーターの甘く切ないバラードを歌うバンド”という評価が世間では広く定着してしまったようです。

実際、当アルバム以降はたびたびピーター単独の楽曲がアルバムに収録されることとなります。とくにピーターのブラス離れは急速に進行します。こうなると、初期からバンドを引っ張ってきたロバートやテリーの出番はなくなります。現にチャート上の話ではありますが、2人のヴォーカル作品はシングル化されてもさして奮(ふる)いませんでした。

もともとアルバム志向のバンドであるとはいえ、世間やバンドの路線が自分の思惑から外れていく様子について、ロバートやテリーは相当歯がゆい思いをしていたようです。こうして、後に『ラヴ・ミー・トゥモロウ(シカゴ16)』以降でさらに“売れてしまった”バラード曲の数々もあいまって、シカゴは自らが思うイメージとの違いに苦慮することになります。

とはいえ、この"IF YOU LEAVE ME NOW"は、単純に素晴らしいと評価できる曲ですよね。メンバーももっと素直に捉えて欲しかったなあ〜、と思えてなりません。もっとも、ライヴではとても楽しそうに演奏してくれていて、この曲が大好きな私としてはとても嬉しく思っています。

Q&A 歌詞に関する疑問
05
TOGETHER AGAIN
再び君と

LEE LOUGHNANE

06
ANOTHER RAINY DAY IN NEW YORK CITY
雨の日のニューヨーク

ROBERT LAMM

ロバートが幼い頃過ごしたニューヨーク。そんなニューヨークの、雑多で、しかし、思い出のある情景を雨を通じて表現しています。

まず、詩を見て気が付くのは、しっかり韻を踏んでいること。

……rainy day ……City
……in my way ……City

そして、使われる形容詞の先頭のアルファベットが揃っていることです。

softly, sweet, so silently
tender, tough, too tragic

とくにこの後者の作詞センスは素晴らしいと思います。そのせいか、ピーターの歌い方もとても小気味良く聴こえます。

また、オセロ・モリノー、リロイ・ウィリアムスによるスティール・ドラムの客演も見事です。雨粒が落ちるさまか、はたまた、きらきらと輝く晴れ間を表しているかのようで、曲に華麗な響きを与えてくれています。

しかも、2000年の日本公演で、作者であるロバート自身がボーカルを担当して演奏してくれことは、まだ記憶に新しいところですよね。

ところで、その2000年の公演でも披露されたこの曲は、"98年バージョン"とも言うべきもので、76年発表のオリジナル・バージョンとは、歌詞が若干異なります

ANOTHER RAINY DAY IN NEW YORK CITY '98

Q&A 歌詞に関する疑問

07
MAMA MAMA
いとしい人
PETER CETERA

シカゴ・ファンの中でもなぜかあまり話題に上らないこの曲が私は大好きです!

曲調は70年代流行ったブレッドのようなソフト・ロック・バラード。

しかし、シカゴならではのブラスが入ってます。ピーターはブラスを嫌がっていたという話をよく聞きますが、この曲の甘ったるい情感はブラスがあってこそ。この曲もフレンチ・ホーン(ホルン)のアレンジをハスケルが担当していますが、吹いてるのは誰なんでしょう?シカゴのホーン・セクションのようでもあり、また、そうでないようでもあり、結局分かりません。

さらに、ここでもジミー・ハスケルのストリングス・アレンジが秀逸の出来。

内容は、新しい恋人に出会ったときのしびれる気持ちを表現しようとするが、しきれないヤワな男の心境を綴ったもの。"HAPPY MAN"に通ずるものがありますが、同曲よりはやや消極的な男をイメージします。

形式的には、"IF YOU LEAVE ME NOW"同様、韻を踏んだ、ピーターの詩によく出てくる特徴が見受けられます。

……
Suddenly it's all around
……
I can even hear the sound

そして、のちの"YOU'RE THE INSPIRATION"のような動詞(前置詞)だけ変えるやり方もここで出ています。

I really need you mama
I really love you mama



cf. "YOU'RE THE INSPIRATION"

Wanna have you near me
I wanna have hear me sayin'



さらに注目すべきは曲順。CDでこそ7曲目ですが、LPではB面の1曲目でした。B面の1曲目はレコードを裏返しにして初めて聴く曲であり、そのためか、通常は、自信作やノリのいい曲を持ってきます。バンドとしてこの曲を自信作として送り出したかどうかは疑問のあるところですが、重要な位置付けだったことはたしかだったと思います。まあ、それとも、ガルシオが勝手にB面の1曲目にしたと見るべきなのか、あるいは、単なる気まぐれなのか・・・。
08
SCRAPBOOK
思い出のスクラップ・ブック

ROBERT LAMM

09

GENTLY I'LL WAKE YOU
僕だけの君に

ROBERT LAMM

10

YOU GET IT UP
君はセクシー

ROBERT LAMM

11

HOPE FOR LOVE
愛の終わりに・・・・・・

TERRY KATH

<ライノ再発盤ボーナス・トラック>
12
I'D RATHER BE RICH (Original Version / Rehearsal)
憧れのリッチマン (オリジナル・バージョン/リハーサル)
ROBERT LAMM

13
YOUR LOVE'S AN ATTITUDE
ユア・ラヴズ・アン・アティテュード
TERRY KATH