もともとは、94年1月15日に心臓発作のため惜しまれつつ他界したニルソン(享年52歳)へのトリビュート・アルバム『FOR THE LOVE OF HARRY : EVERYBODY SINGS NILSSON』(95年)に収録されていた曲です。
彼ら“BECKLEY-LAMM-WILSON”の名が世に知れ渡ったのも、このニルソンへのトリビュート話があった頃からでしょう。
しかし、冒頭の総評にあるように、実際には、このB-L-Wプロジェクト自体は、これより先に進行していたわけです。むしろ、この"WITHOUT HER"は、B-L-Wとしては、最後の方の録音だったようです。
もっとも、アルバム『LIKE A BROTHER』に表記されてるクレジットは最終的な編集を経たときを基準にしてるせいか、そのほとんどが2000年となっています。これには以下のような事情が考えられます。つまり、実際の録音は、もちろんカールの体調の良いとき、おそらく95年中までにはほぼ完了していたようです。しかし、カールの死を経て、その後も、レコード会社からの要請により、ロバートとジェリーが何回か細部の手直しのためにスタジオに入った関係上、2000年と表記されたものと推測されます。
さて、話は上記ニルソンのトリビュート盤『FOR THE LOVE OF HARRY : EVERYBODY SINGS NILSSON』に戻ります。このアルバムは、日本では入手が難しく、私自身も、発売後しばらくすると、その購入をすっかりあきらめてしまいました。
ところが、一方で、3人がB-L-Wとしてアルバムを作成する予定だ、という情報が入ってきたのです。思わず、「やったー!」と期待に胸を膨らませました。私はこの3アーティストとも好きでしたから、まさに夢のような共演だったわけです。
しかし・・・、一向に出る気配はありません。「なんなんだよ〜、一体!?」という心境です。途中、ジェリーやロバートのソロアルバムはリリースされるものの、B-L-Wについては「なお進行中」とのコメントがなされるのみでした。
そうこうするうちに、決定的な情報がもたらされます。すなわち、“カールの死!”という衝撃的な情報でした(98年2月6日、肺がんによる合併症のため逝去。享年51歳)。
この記事を新聞で読んだときは、ショックでショックで、「あ〜、もうダメだー」と、「これで完全に希望もついえたか・・・」と思いました。実際この時点でもう完全に諦めました。
しかし、現実とは奇妙なもので、もしかしたら、このことによってエンジンがかかったのかもしれません。
ようやく2000年になって、“『LIKE A BROTHER』リリース決定!”のニュースが飛び込んできました。何度も裏切られてきたので、まさに半信半疑でしたが、今度はちゃんと日付(2000年6月20日)まで確定してました。「えー、ウッソ〜」って感じです。
ただ、その時点で、国内盤発売の予定はなかったので、手に入れるのに四苦八苦しました。結局、人に買ってきてもらうというまったくの他力本願で手にすることができたのです。
そして、2001年6月21日、つまり、ちょうど1年の時を経て、罪作りなこのアルバムの日本国内盤がリリースされるに至ります。
というわけでして、このアルバム『ラ』については、とてつもないい入れがあります。LIKE A BROTHER
さて、肝心の曲の方は、ジェリーがリード・ヴォーカルを担当しています。オリジナルのニルソンと比べても遜色ないのは、ジェリーのこの内省的な声質のおかげでしょう。"I NEED YOU"のジェリーだからこそ、この独特の雰囲気をかもし出せるのだと思います。とくに≪We burst the pretty balloon It tooks us to the moon Such a beautiful thing But it's ended now 〜≫あたりの盛り上がり部分が聴きどころです。なお、その他歌詞についての疑問はこちらへ。
主人公は≪彼女なしじゃやっていけない≫という少々弱めの男ですが、元来男の方が寂しがり屋なのかも?と思うのです。
ところで、ありがたいことに、のちに、『FOR THE LOVE OF HARRY』バージョンを聴く機会がありましたが、どうやら同一のものと考えてよさそうです。ただ、こちらでは、曲の後半部分に次の曲のイントロがオーバーラップしているので、むしろ『LIKE A BROTHER』がリリースされて本当に良かったです。
ちなみに、ニルソンというと、どうしても"ウィザウト・ユー"や、映画『真夜中のカーボーイ』で使われた"うわさの男"(EVERYBODY'S TALKIN')を思い起こしますが、これらはともに他人の作品で、例外の部類に属します。これに対して、この"ウィザウト・ハー"はニルソン自身のペンによるもので、ブラッド・スウェット&ティアーズ(BLOOD, SWEAT & TEARS)をはじめ多くのアーティストにカバーされているように、とてもアーティスト受けする曲みたいです。
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